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ビジネス書を読むと、「自ら市場を定義せよ」「新しい顧客を開拓せよ」といった言葉をよく目にします。
もちろん間違いではありません。 しかし、リソースの限られた中小企業にとって、未知の市場への投資は簡単ではありません。 予算も人員も限られる中で、暗闇に向かって投資を続けるのは大きなリスクを伴います。 では、中小企業はどのようにしてブレイクスルーを起こせばよいのでしょうか。 そのヒントが、静岡県浜松市の飲食企業・鳥善の取り組みにありました。 同社のベジタリアン向けカレーが、日本航空(JAL)の国際線機内食に採用されたというニュースです。 一見すると華やかな成功物語に見えますが、その出発点は、自動車メーカー・スズキから持ち込まれた「少し面倒な依頼」でした。 始まりは「インド人社員向けの社員食堂」 鳥善が取り組んだのは、スズキのインド人社員向けのベジタリアンカレーの開発でした。 日本の一般的なカレーには、牛脂や豚脂、チキンエキスなど動物性原料が使われています。 しかし、インド人ベジタリアン向けの食事ではそれらを使用できません。 さらに、多くの利用者の食習慣に配慮し、調理工程でのコンタミネーション対策も求められました。 正直なところ、多くの企業であれば「手間のかかる割に市場の小さい仕事」と考えたかもしれません。 しかし鳥善は、この依頼を単なる受託業務で終わらせませんでした。 「巻き込まれたら利用する」という発想 鳥善は社員食堂向けのメニュー開発で得たノウハウを、レトルトカレーへ展開します。 そして、その販売方法が実に興味深いのです。 商品名は「鳥善カレー」ではありません。 「スズキ食堂」です。 パッケージにはジムニーやハヤブサなどスズキの人気車種を採用し、販売もスズキ公式ECサイト「S-MALL」を活用しています。 つまり鳥善は、
多くの中小企業は「自社ブランドを育てなければ」と考えます。 もちろんそれも大切です。 しかし鳥善は、自前主義にこだわりませんでした。 自社が得意なことは徹底的に磨く。 一方で、集客や販売は既に強みを持つ企業の力を借りる。 その結果、鳥善はデジタルマーケティングやEC運営に経営資源を割くことなく、「本物のベジタリアンカレーをつくる」という強みに集中することができました。 その先にJALがいた その転機となったのが、2025年に浜松市内で開催された「インドはままつフェスティバル」でした。 会場で鳥善のカレーを食べたJALインド支店長は、「日本で本場のカレーが再現できるのか」と衝撃を受けます。 スズキ幹部の仲介もあり、機内食採用の話は一気に進みました。 機内食の安全基準を満たすため、1500万円を投じて金属探知機などを導入。 結婚式場のキッチン設備も活用しながら品質向上を進め、JAL国際線の通常機内食への採用を実現したのです。 偶然の出会いだけで成功したわけではありません。 目の前に現れた機会を見逃さず、さらに投資を行ったからこそ、新たな市場への扉を開くことができたのです。 下請けで終わる会社、資産に変える会社 中小企業には、大企業から様々な要望が寄せられます。
もちろん、その気持ちは理解できます。 しかし鳥善の事例が教えてくれるのは、その要望の中にこそ次の事業の種が眠っている可能性があるということです。 単に言われた通りに納品して終われば、利用されるだけです。 しかし、その経験を商品化できないか。 他の顧客にも展開できないか。 そこで得た技術やノウハウを新しい市場へ転用できないか。 そう考えた瞬間に、受託業務は「資産」へと変わります。 おわりに 中小企業がゼロから市場を創り出すのは簡単ではありません。 だからこそ、今目の前にある顧客との仕事を見直してみてください。 その中に、面倒だと思っている依頼はないでしょうか。 鳥善の強みは、社員食堂向けの受託業務をそのまま終わらせなかったことです。 レトルトカレー、冷凍食品、そしてJAL機内食へと展開し、一つの顧客から得たノウハウを複数の収益源へ変えたことです。 これは単なる新商品開発ではなく、「受託業務の資産化」と呼ぶべき取り組みでしょう。 大企業の無理難題は、時として自社だけでは絶対に出会えない新しい市場への入り口になります。 利用されるだけの下請けで終わるのか。 それとも、その経験を資産に変えるのか。 その差が、次の成長を決めるのかもしれません。
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企業が倒れる理由は様々ですが、その中でも特に破壊力の大きいリスクがあります。
それが「不誠実な経営」です。 経営者であれば、 「赤字を隠したい」 「会社を立派に見せたい」 という誘惑に駆られる瞬間があるかもしれません。 しかし、その一歩は会社を救うどころか、静かに内部から壊していきます。 最近報じられた大阪の高級鮮魚業者「海商」の問題や、過去の「堀正工業」「プロルート丸光」といった事例を見ると、企業経営には共通する危うさが見えてきます。 それは、 「不誠実は、最終的に企業から最も大切なものを奪う」 ということです。 不誠実は“最悪のコスト”を生む 粉飾決算や助成金の不正受給は、一時的には会社を延命させるように見えます。 しかし実際には、会社から最も大切な「現金」を奪っていきます。 例えば堀正工業では、銀行ごとに異なる決算書を使い分けていたとされますが、その結果、本来払う必要のない法人税まで支払っていました。 また、プロルート丸光でも、不正受給した助成金の返納に加え、粉飾決算が経営悪化に拍車を掛けました。 嘘を維持するためには、
不誠実な経営とは、会社を救う行為ではありません。 会社を静かに出血させ続ける“慢性疾患”なのです。 「見栄」が会社を壊す 破綻した企業に共通するのは、 「会社を大きく見せたい」 「優良企業と思われたい」 という過度な見栄です。 しかし、見栄は一度始まると止まりません。 小さな粉飾を隠すために、翌年はさらに大きな粉飾を重ねる。 気づいた時には、自力では戻れない規模まで膨れ上がっています。 経営者が守るべきなのは、自らの体裁ではなく、現場で働く従業員とその家族のはずです。 不誠実は組織の「鮮度」を奪う 海商が扱っていたのは高級鮮魚でした。 魚の鮮度には細心の注意を払っていても、経営の「数字」が濁れば、組織全体が腐敗します。 数字の不正は、単なる会計問題ではありません。 「数字は誤魔化してもいい」 という空気が広がると、
組織は、トップの倫理観に引っ張られるからです。 正直さこそが会社を守る ここで強調したいのは、 「赤字は悪ではない」 ということです。 商売をしていれば、一時的な落ち込みは避けられません。 しかし、経営者が正直であれば、再建の道は残されます。 事実を正直に開示し、誠実に再建へ向き合う企業には、
赤字は改善できます。 しかし、失った信用を取り戻すことは極めて困難です。 経営において最後にものを言うのは、結局「信用残高」です。 苦しい時に正直でいられる企業だけが、長期的には生き残っていきます。 まとめ 不正は、ある日突然起きるものではありません。 「少しぐらいなら」 「今期だけなら」 という小さな例外の積み重ねが、やがて会社全体を壊していきます。 だからこそ、内部統制とは会社を縛るための仕組みではありません。 会社を守るための仕組みなのです。 経営者が本当に守るべきものは、目先の数字や体裁ではなく、誠実な商売を通じて築き上げる「信用」と「未来」です。 信頼しているからこそ、任せきりにしない日本郵便の入札をめぐる不祥事は、
「大企業だから起きた問題」でも、 「特殊な事件」でもありません。 本質は、特定の担当者が重要な情報にアクセスでき、周囲のチェックが十分に働いていなかった点にあります。 つまり問題は、社員個人の資質だけではなく、一人で不正ができてしまう状態を放置していた組織の仕組みにあります。 これは中小企業にとっても、決して他人事ではありません。 性悪説は、社員を疑うことではない 多くの経営者は、 「うちは社員を信じている」 「疑うような仕組みは作りたくない」 と言います。 しかし、内部統制でいう性悪説とは、 「人は悪いことをする」と決めつけることではありません。
二重チェック、権限分散、承認記録。 これらは社員を疑うためではなく、社員が疑われないようにするための防具です。 「かわいさ余って憎さ百倍」になってからでは遅い 経営者が陥りやすいのは、 信頼している社員ほど、丸投げしてしまう という罠です。 「あの人なら大丈夫」 「長年やってくれているから任せている」 そうしてチェックが省略されます。 しかし、不正や重大なミスが発覚した瞬間、信頼は一気に反転します。 かわいさ余って憎さ百倍。 長年信頼してきた社員ほど、裏切られたと感じたときの怒りは大きくなります。 しかし本来、それは社員だけの問題ではありません。 一人に任せきりにした経営者の責任であり、組織の設計ミスでもあります。 きちんと仕組みを作っておかなければ、会社も社員も、あとで大きなしっぺ返しを受けることになります。 中小企業こそ「一人で完結」が危ない 中小企業では、次のようなことが珍しくありません。
しかし実際には、一人で完結できてしまう危険な状態です。 規模の問題ではありません。 仕組みの問題です。 完璧でなくても、サンプルチェックならできる もちろん、中小企業では人手に限りがあります。 大企業のように担当・承認・監査を完全に分けることは現実的ではありません。 それでも、次のような確認は可能です。
完璧な内部統制でなくても構いません。 大切なのは、「誰かが見る可能性がある」状態を作ることです。 何も見ないより、毎月数件でも見る。 それだけでも、不正やミスへの抑止力になります。 信頼しているからこそ、仕組みで守る 内部統制とは、社員を疑うための仕組みではありません。 社員を守り、会社を守り、経営者自身を守るための仕組みです。 信頼しているからこそ、任せきりにしない。 信頼を壊さないために、最低限の確認を仕組みにする。 それが、中小企業に必要な内部統制の第一歩です。 |
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