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中小企業診断士試験合格者として思うこと

やりたいことと、やるべきこと・やれることは違う 〜旧三菱財閥の成長に学ぶ、事業多角化の本質〜

30/10/2025

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非関連事業への展開について夢を語る中小企業の社長様と出会いました。
夢を描くこと自体は素晴らしいことです。
しかし、その夢を「いつ・どうやって・なぜ実現するか」には、慎重な見極めが必要です。

このテーマについて考えるとき、私はよく旧三菱財閥の歴史を思い出します。明治から昭和にかけて日本経済を牽引したこの巨大企業体も、はじめから多角的な事業を志していたわけではありません。
むしろ、三菱の出発点は、土佐藩の借金整理と貿易事業という極めて限定された「やるべきこと」でした。

事業は「必要に応じて」広がっていくもの

岩崎弥太郎によって設立された三菱商会(後の三菱財閥)は、当初、海運事業からスタートしました。しかし、海外貿易が拡大するにつれて、造船業が必要になり、そこから銀行業、製鉄、保険、そして最終的には三菱重工・三菱銀行・三菱地所・三菱自動車など、実に多くの事業へと枝を広げていきました。

注目すべきは、それらの事業拡大が「やりたいからやった」のではなく、「必要だから」「やれる体制が整ったから」「リスクと責任を負えるから」着手されたという点です。

つまり、旧三菱財閥の多角化は「やるべきこと・やれること」の延長線上にしかなかったのです。

「夢」と「戦略」の境界線

中小企業において、現業の足場がまだ固まっていないうちから全く異なる分野へと手を出すのは、例えるなら基礎の浅い家に増築を重ねるようなものです。一見、規模が大きく見えても、土台が揺らげば全てが倒れてしまいます。

多角化は決して悪ではありません。
しかし、それが「やりたいこと」だけに基づいている場合は、企業の資源(人・モノ・カネ・時間)を分散させ、かえって本業の価値を毀損するリスクを伴います。

反対に、「やるべきこと」―すなわち顧客ニーズや市場環境に押されて進出する場合は、それが本業の強化につながることも多いのです。例えば、建設業がリフォームに進出する、IT企業がセキュリティサービスを始める、といったケースです。

さらに大事なのは、「やれること」かどうかの見極めです。
自社の強みや人材、財務状況を冷静に分析し、仮に儲かる事業でも、自社にとって「まだその力がない」のであれば踏み込むべきではありません。

中小企業こそ「一点突破」が武器になる

旧財閥のような大企業とは異なり、中小企業には限られた資源しかありません。
​だからこそ、「何をやらないか」を決めることが生き残るための鍵になります。

経営において最も難しいのは、「今はやらないと決めること」です。
ワクワクする未来を思い描きつつも、「今は本業に集中する」「これは夢にとっておく」という判断ができる経営者こそ、長く信頼される存在になっていくのではないでしょうか。


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中小企業こそ学べ!ユーザーと育てるG-SHOCKのブランド戦略

20/10/2025

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 小さな市場から始める戦略の重要性
 
中小企業が大手と同じ市場で勝負するのは簡単ではありません。
そこでおすすめなのが、まずは小さなニッチ市場に特化する戦略です。
限られたお客様に対して、自社の強みや独自価値を届けることからスタートします。

G-SHOCKの事例:ニッチから世界ブランドへ

カシオのG-SHOCKは、その代表例です。
• 発売当初のターゲット:技術者・現場作業者など限られた層
• 差別化ポイント:「落としても壊れない腕時計」という高い耐久性
• 市場規模:小さなニッチ市場
発売当初はまさにニッチ市場を狙った製品でした。
しかし、G-SHOCKは、開発者が意図しなかった価値をユーザーに見出されました。
具体的には、アメリカのスケーターやミュージシャンたちが、G-SHOCKを「ストリートでクールな時計」、「タフな生き様を象徴するアイテム」として支持したことで、ブランドの価値はユーザーの声と使い方によって拡張されました。
この「マーケットとの会話」が、結果的にマス市場へ広がり、世界的なブランドに成長する鍵となったのです。

マーケットとの会話から学ぶ中小企業の教訓 

G-SHOCKの事例から、中小企業が学べる重要なポイントは、一方的な供給ではなく、強固な軸を基盤としたマーケットとの対話(会話)を重視することです。

1. マーケットの「隠れた声」を吸い上げることが成功の鍵
  • ユーザーの反応や意見を取り入れることで、製品の想定外の価値を市場と共に高めることができます。G-SHOCKが「耐久性」から「ストリートのファッション性」という新しい価値を得たように、お客様の使用シーンや感想には、新たな市場を切り拓くヒントが隠されています。
2. 小さく始めて「対話のサイクル」を回す
  • 最初から大きな市場を狙う必要はありません。小さな市場で価値を証明することが、ブランド構築の第一歩です。熱心な初期ユーザー(アーリーアダプター)との密な対話を始め、彼らの意見を迅速に製品改良や情報発信に活かすことで、ブランドへのロイヤリティを高め、市場を自然に拡張できます。
3. 強固な独自価値(軸)を徹底的に磨き、ユーザーと共育する
  • カシオが「丈夫さ」という軸をぶらさなかったように、中小企業も機能・品質・サービスなど、差別化できるポイントを徹底的に強化し続けることが生命線です。
  • この強固な独自価値(コア)があったからこそ、ユーザーは安心してG-SHOCKに「ファッション性」や「ストリートのクールさ」という新しい価値を付加することができました。ユーザーの期待に応えるだけでなく、時にはユーザー自身がブランドの価値を再定義してくれるという考え方を持つことです。

まとめ 

G-SHOCKの例は、「ニッチ市場に特化してスタートし、マーケットの声を吸い上げながらユーザーと共創することでブランド価値が拡張された」典型例です。
中小企業もまずは小さな市場で自社の強みを示し、揺るがない独自価値を軸に、ユーザーとの対話を通じてブランドを育てる戦略が有効です。
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「なぜか現金がない」~経理を軽視した会社の行方

10/10/2025

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うちは小さな会社だから」「細かいことは担当者に任せているから」
-そう思っていませんか?
もしそうであれば、今回の事例はまさにあなた自身の物語かもしれません。

私が最初に転職した外資系製造会社は、従業員約50名の規模でした。
ところが、入社してすぐに驚く事実が判明します。
前任者は業務の引き継ぎを一切行わないまま3か月前に退職しており、さらに数年にわたって帳簿の粉飾(数字のごまかし)をしていたのです。


原価計算を軽視すると、規模や業種を問わず会社の資金繰りを直撃します。

2005年ごろからリーマンショック前まで、この会社の主原料の金属価格が高騰していました。
にもかかわらず販売価格はほぼ据え置きだったのです。
本来であれば「原価と販売価格の差」に気づくべきでした。

しかし、経営者は全く無知だったのです。
その結果、帳簿上は「順調に利益が出ている」と報告されていましたが、その裏では慢性的に資金がショートし、将来の入金を前倒しで現金化する「手形割引」に頼らざるを得ない状態でした。


見るべきは「表面の数字」ではなく「資金の流れ」

では、原価計算がわからなければ、この事態に気づくことは不可能だったのでしょうか?
この事態から経営者が学ぶべき教訓は、極めてシンプルです。

 異常な資金繰りを察知する:
  帳簿上の利益だけを見て安心しないでください。
  経営者は、会社の現金の動きこそを最も注視すべきです。
  手形割引のような、本来頻繁に使うべきではない資金調達に頼り始めるのは、内部に深刻な問題があることを示す最大の兆候です。

 原価管理の徹底:
  損失が隠された原因は、まさに「原価計算を軽視したこと」にあります。
  プロジェクトや製品一つひとつの原価を正確に把握しなければ、本当の利益が出ているのか、それとも赤字なのかを判断できません。

 担当者の言葉を鵜呑みにしない:
  経理の担当者も、業績悪化を経営者に報告できず、苦し紛れに粉飾に走ることがあります。
  彼らの報告を鵜呑みにせず、なぜその数字になったのか、具体的な資金の流れと照らし合わせて検証する姿勢が不可欠です。

最終的に、この会社は長期にわたる異常な資金繰りから問題に気づきました。
しかし、その段階ではすでに「知らないうちに資本金が吹き飛ぶ」寸前でした。

数字は嘘をつくことがあっても、現金は決して嘘をつきません。
​日々の業務に追われる中で見落としがちな、数字の裏に隠された「声」に、今一度耳を傾けてみてください。



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    執筆者

    imwz経営サポート代表
    伊藤安彦
    不定期ですが、頑張ってアップします。
    ​

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