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人は商品を買うだけでなく、その背景にある想いにもお金を払っているのかもしれません。
先日、日経MJに大変興味深い新興企業の取り組みが掲載されていました。 全国各地の中小企業や農業の支援を手がける「空とぶネコ合同会社」が6月下旬に発売する新商品。 その名も「3000kmブランマンジェ」です。 この商品は、応援購入サイト「Makuake」での先行販売開始わずか2時間で目標金額を達成し、その後も購入額を大きく伸ばしました。 なぜ、このブランマンジェはこれほど多くの人の心を動かしたのでしょうか。 3000km離れた2つの食材が出会う場所 まず目を引くのは、その圧倒的なこだわりとストーリーです。 メイン食材は、オホーツク海に近い北海道西興部(にしおこっぺ)村の萩原牧場で、牧草だけを食べて育った乳牛から搾られるグラスフェッドミルクの生クリーム。 そして、そこから約3000キロメートル離れた鹿児島県喜界島のファームテック喜界で、収穫当日のサトウキビの搾り汁だけを使って作られる純黒糖です。 この日本の北と南にある二つの厳選食材を、福岡県のミシュラン一つ星獲得店の辻光シェフが一つのデザートへと仕上げました。 「北海道と鹿児島の厳選食材、そしてミシュランシェフの技」 これだけでも十分魅力的で、人に話したくなるストーリーがあります。 しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。 顧客は、このストーリーだけに惹かれたのでしょうか。 ストーリーの奥にある金子氏の使命 空とぶネコを率いる金子史人代表は、年間200回以上も飛行機で地方へ足を運び、自ら一次情報を集め続けています。 彼を突き動かしているのは、洗練されたマーケティング戦略ではなく、日本の生産現場に対する強い危機感です。 金子氏は自社サイトでこう語っています。 「後継者不足により、長年培われてきた技術や、価値ある素材が市場に届かないという状況を目の当たりにし、これらの課題が地域から新たな挑戦の芽を摘もうとしているという現実を痛感しています。 私たちの使命は、地域に眠る素材や、生産者、メーカーの価値を、一流の料理人や事業者の力を借りて広く世に届けることです。」 日本の基幹的農業従事者は、この5年間で大きく減少しました。 機械化や後継者不足の影響で、大量生産では作れない価値ある食材や技術が失われつつあります。 金子氏の挑戦は、単なるスイーツ開発ではありません。 「地域に眠る価値を次の世代へつなぎたい」 その想いを形にするための挑戦です。 顧客が本当に共感しているもの 私たちはよく、 「これからはストーリー消費の時代だ」 と言います。 商品の背景にある物語を語れば売れる、と考えがちです。 しかし、この事例が教えてくれるのはもう一歩深い本質です。 顧客は、物語そのものに共感しているのではありません。 その奥にある想いに共感しているのです。 3000kmブランマンジェのストーリーが魅力的に映るのは、その根底に 「生産者を残したい」 「地域の技術を残したい」 という金子氏の一貫した使命感が流れているからです。 購入した人の中には、美味しいデザートを買っただけではなく、その想いを応援したいと考えた人も少なくなかったのではないでしょうか。 物語は興味を生みます。 しかし、人を動かすのは、その奥にある想いです。 中小企業が今、本当に伝えるべきこと これは空とぶネコ合同会社だけの話ではありません。 多くの中小企業にも共通する話です。 私たちは商品を紹介するとき、 ・どんな機能があるか ・どんな技術を使っているか ・どれだけ品質が高いか といった商品特性ばかりを説明しがちです。 もちろんそれらは重要です。 しかし、スペックの差がすぐに埋まってしまう時代において、それだけで顧客の心を掴み続けることは容易ではありません。 今求められているのは、 「なぜこの事業を続けているのか」 「どんな課題を解決したいのか」 「何を未来へ残したいのか」 という企業の想いを伝えることです。 その想いに共感した人は、単なる顧客ではなく応援者になります。 あなたの会社にも、創業の原点や日々の仕事の中で譲れない信念があるはずです。 一見すると泥臭く見えるその想いこそが、大企業には真似できない価値なのかもしれません。 語られる商品には、語られる理由があります。 そして、その理由の奥には必ず誰かの想いがあります。 「何を売るか」の前に、「なぜやるのか」。 あなたの会社が持つその想いを、もう一度言葉にしてみてはいかがでしょうか。
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- たまごっち再流行が突きつける経営の問い【現状分析】大手と同じ土俵で戦うことの危うさ
DX(デジタルトランスフォーメーション)や効率化は不可欠です。 しかし、中小企業が「便利さ」や「安さ」だけで勝負しようとすれば、圧倒的なリソースを持つプラットフォーマーや大手チェーンには勝てません。 デジタルネイティブ世代ですら、たまごっちやフィルムカメラといった「手触りのある体験」に熱狂する傾向が出ています。 これは単なるノスタルジーではなく、効率一辺倒のデジタル体験にはない 感覚的価値(エモさ) を求める動きが背景にあります。 多様性が社会において浸透される中、「機能的ベネフィット(役に立つ)」だけでなく「情緒的ベネフィット(意味がある)」も受け入れられるようになっているのです。 【中小企業の武器】「不自由さ」を「情緒的ベネフィット」に変換する 中小企業が目指すべきは、機能の改善ではなく「関与の設計」です。 • 「待たせる」という価値: 即レス・即納が当たり前の時代に、たとえば「職人が受注から約3週間かけて一つ一つ仕上げています」というように、工程の時間や手間を物語として見せることは、ただ早く納品するだけでは得られない価値になります。 • 「手間をかけさせる」という愛着: 完成品を売るだけでなく、あえて最後にユーザーが「一工夫」加える余地を残す(IKEA効果の応用)。 • 「標準化しない」という物語: いつどこで買っても同じクオリティの「正解」ではなく、その時々の季節や作り手の個性が反映される「揺らぎ」をストーリーとして伝える。 【提言】経営者が今、見直すべき3つの「非効率」 1. 「不便」を「体験」に書き換える 自社の製品・サービスにおいて、お客様が一番「手間」だと感じている部分はどこか? それを「自動化」で消し去るのではなく、お客様が「楽しむプロセス」に昇華できないか検討してください。 2. デジタルを「プロセスの共有」に使う デジタル化を単なる効率化(コスト削減)に使わず、製造の裏側や、苦労した物語を発信し、お客様を「物語の目撃者」にするために活用してください。 また、その体験をデジタルを使って他人と共有させる仕組みづくりも必要になります。 3. 「生産性」の定義を再定義する 数値化しやすい「時間当たり生産数」だけでなく、 SNSでの共有数、再購入率、口コミ件数 など、顧客体験の価値を計る指標を組み入れるべきです。 【結び】スモールビジネスの逆襲 たまごっちが再流行したのは、それが単なる玩具ではなく「放っておけない存在」だったからです。 中小企業における「不自由さ」や「手間」は、お客様にとっての「放っておけない愛着」になり得ます。 効率化の波に飲まれるのではなく、あえて「手触り感のある不自由さ」をデザインすること。 これこそが、これからの時代、お客様に選ばれ続けるための最強の生存戦略となり得ます。 効率化やDXは重要ですが、それ自体が目的になってはいけません。 もし御社の商品から「便利さ」だけを取り除いたときに、お客様が語りたくなるような独自の価値(ストーリー・体験)が残るかをこそ問うべきです。 その価値こそが、現代の顧客が求める「意味ある体験」です。 もしそこに、お客様が思わず誰かに語りたくなるような『職人のこだわり』や、放っておけない『手触り感のある不自由さ』が残っているのなら、それこそが御社だけの最強の生存戦略となります。 たまごっちが令和の時代に再び愛されたように、御社の商品もまた、効率を超えた『愛着』によって選ばれる存在になれるはずです。 今一度、御社にしか語れないストーリーを掘り起こしてみませんか? 導入:便利さをはがすと、何が残るのでしょうか
これは昨日の記事の関連になります。 効率化が進み、無駄が徹底的に排除された現代社会。 その“便利さの皮”をすべてはがしたとき、最後に残るものは何でしょうか。 私は、行きつく先は愛着や価値、そしてストーリーだと思っています。 言い換えれば、人間が持つ感情の揺らぎや、誰かとつながりたいという欲求です。 先日、テレビ東京系の番組で岡山県の文具店「うさぎや」が紹介されていました。 ある商品には、岡山銘菓「大手まんぢゅう」のミニチュアが付いています。 また別の商品には、「ぶっかけうどん」のミニチュアが付いています。 それを見た人は思わず尋ねたくなります。 「それ、何ですか?」 そこから岡山の話になり、旅行の話になり、人と人との会話が生まれます。 うさぎやの商品は、単なる文具ではありません。 人と人をつなぐ“会話のきっかけ”になっているのです。 この事例には、中小企業が大企業と違う土俵で戦うためのヒントが隠されているように感じました。 大企業の「正解」と中小企業の勝負どころ 大手メーカーの商品は便利で品質も安定しています。 機能も優れており、誰が使っても一定の満足を得られます。 まさに「正解」と呼べる商品です。 しかし、その一方で会話のきっかけになることは多くありません。 不満はありません。 けれども、誰かに話したくなるわけでもありません。 中小企業が機能や価格だけで大企業と競争することは簡単ではありません。 だからこそ、勝負すべきなのは機能ではなく感情です。 人が思わず笑ったり、驚いたり、誰かに伝えたくなったりする。 そんな「感情のスイッチ」を仕込むことこそ、中小企業の強みになるのではないでしょうか。 うさぎや文具が生み出しているもの うさぎやの商品は、単なる筆記用具ではありません。 人と人をつなぐコミュニケーションの触媒として機能しています。 ① 会話のきっかけをつくる 「大手まんぢゅう」や「ぶっかけうどん」のタグが付いたボールペン。 機能だけを見れば普通のボールペンです。 しかし、見た人は思わず、「それ、何ですか?」と聞きたくなります。 商品そのものが会話を生み出し、人と人を結び付けるメディアになっているのです。 ② 持ち主を語り部に変える 番組では、倉敷美観地区にあるガラス工房aunとのコラボによるガラスペンも紹介されていました。 そこには地域の職人技や伝統工芸という背景があります。 その商品を持つ人は、単なる消費者ではありません。 「実はこれ、倉敷のガラス工房が作っているんですよ」と誰かに話したくなります。 人は面白い物語を誰かと共有したくなる生き物です。 うさぎやは商品を売っているだけではありません。 顧客を“語り部”に変えているのです。 なぜ今、このような商品が求められるのでしょうか。 デジタル化が進み、私たちは画面越しのコミュニケーションに囲まれています。 便利になった反面、人と人が直接会話する機会は減りました。 だからこそ、「それ面白いですね」「実はこれにはこんな話があるんです」という何気ない会話に価値を感じるようになっているのかもしれません。 人はモノそのものを買っているのではありません。 そのモノを通じて得られる体験や会話、共感を買っているのです。 そして、うさぎやの事例にはもう一つ重要な示唆があります。 それは「地域資源の再編集」です。 うさぎやはボールペンを発明したわけではありません。 手ぬぐいを発明したわけでもありません。 ガラスペンを発明したわけでもありません。 しかし、・大手まんぢゅう・ぶっかけうどん・倉敷のガラス工芸といった地域にある魅力を組み合わせ、新しい価値として顧客に届けています。 中小企業に必要なのは、必ずしもゼロから何かを発明することではありません。 すでに身近に存在している価値を見つけ出し、新しい形で顧客に届けることではないでしょうか。 顧客が語りたくなる物語はありますか 大企業の便利さには勝てません。 しかし、人間の「面白がりたい」「誰かと話したい」という感情に寄り添うことはできます。 顧客の心を動かすのはスペックだけではありません。 そこに込められた物語であり、その物語を通じて生まれる人とのつながりです。 あなたの商品には、顧客が誰かに語りたくなる物語がありますか。 |
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