ここを近年、日本を訪れる外国人観光客が急増し、2025年上半期には2,000万人を突破、消費額も5兆円に迫る勢いです。
円安の後押しもあり、国内観光業は活況を呈しており、インバウンド消費は自動車産業に次ぐ「準・輸出産業」としての地位を確立しつつあります。 しかし、この賑わいの裏で、静かに広がる「オーバーツーリズム」による歪みが顕在化しています。 観光地では、私有地への無断侵入やゴミのポイ捨て、地域住民への迷惑行為といった、マナー違反の問題が相次いでいます。 地元住民からは「観光客に生活を乱されている」との声も上がり、観光資源そのものの価値を損なう恐れすら出てきました。 「お願い」だけではもう通用しない時代 これまでの日本では、「性善説」に立ったマナー啓発が主流でした。 しかし、こうしたアプローチだけでは限界があることが明らかになりつつあります。 最近の参院選では、「外国人差別」がひとつの争点となりましたが、この議論の背景には、政府が制度やルールの整備を怠ってきた結果として、地域や企業の現場で“現実的対応”が求められ、そこに歪みが生じてしまった、という側面も否めません。 では、私たちはこの状況にどう向き合えば良いのでしょうか。 ここで注目したいのが、シンガポールのごみ対策です。 同国ではごみのポイ捨てに対して明確な罰金制度があり、違反者は高額な罰則を科されます。 この「明文化されたルール」と「実効性ある罰則」が、市民の行動を大きく変えました。 日本でも、ただ「お願い」するだけではなく、誰にでもわかるルールを明文化し、それを運用していくことが必要です。 これは外国人観光客に限った話ではありません。 日本人を含め、すべての人が対象です。 もはや「モラル頼み」から「仕組みによる行動設計」へのシフトが、国として、そして国民として必要なのかもしれません。 中小企業経営にも求められる「仕組み化」の視点 この「明示的なルール設計」の考え方は、観光に限った話ではありません。 企業経営にもまったく同じ課題が存在します。 かつての日本企業では、「先輩のやり方を見て学べ」「空気を読め」といった、属人的な文化が主流でした。 しかし、現代のビジネス環境では、それでは再現性が担保されません。 品質・成果が個人任せになり、組織としての持続的成長を妨げてしまいます。 今、中小企業に求められているのは、「業務の明文化、マニュアル化、標準化」です。 誰がやっても一定の成果が出せるように、「仕事の仕組み」を明示的に設計し、運用すること。 まさに企業にも、「性善説」ではなく「性悪説に立脚した運営」が必要とされているのです。 あなたの会社は、まだ「人」の善意や努力に頼りすぎていませんか? オーバーツーリズムが私たちに突きつける課題は、あらゆる組織において「仕組みの力」が不可欠であることを示唆しています。 この機会に、自社の業務プロセスを見直し、「人」に依存しない強固な「仕組み」を構築していくことをお勧めします。
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先日行われた東京都議会議員選挙で、石丸伸二氏が立ち上げた政治団体「再生の道」は、「誰もが政治家を志せる社会」を掲げ、政治参加の促進を最優先の目的としましたが、候補者42名が全員落選するという結果に終わりました。この結果は、中小企業の経営戦略においても、非常に示唆に富むものと言えるでしょう。
「理念」と「具体的な提供価値」のギャップ この問題は、まさに「理念」と「具体的な提供価値」のギャップとして現れます。皆様の会社がどんなに「地域貢献」や「お客様第一」といった素晴らしい理念を掲げていても、それだけではお客様は商品やサービスを購入してくれません。
「再生の道」の場合、個々の候補者が独自の公約を掲げたものの、団体全体としての統一された「政策パッケージ」や「当選後に何を実現するのか」という具体的なビジョンが見えにくかったことが、有権者にとっての「提供価値の不明瞭さ」につながったと言えます。 「参加することに意義がある」だけでは選ばれない 「再生の道」は、政治経験を問わず広く候補者を募ることで、「政治参加の促進」という理念自体は体現していました。これは素晴らしい試みですが、選挙においては「参加すること」だけでなく、「選ばれて、期待に応えること」が求められます。 中小企業経営においても同様です。「良いものを作っています」「一生懸命やっています」という思いは尊いものですが、お客様が見るのは、「それが自分の課題を解決してくれるか」「競合より優れているか」「信頼できるか」といった、より現実的な基準です。
「再生の道」の敗因は、まさにこの「選ばれる理由」が明確でなかった点にあると言えるでしょう。 まとめ:中小企業が学ぶべき教訓 「再生の道」の都議選の結果から、中小企業経営者が学ぶべき教訓は多岐にわたります。
今回の選挙結果をきっかけに、自社のブランド戦略や営業戦略をあらためて見直してみることが、今後の成長につながる一歩となるかもしれません。 |