|
企業が倒れる理由は様々ですが、その中でも特に破壊力の大きいリスクがあります。
それが「不誠実な経営」です。 経営者であれば、 「赤字を隠したい」 「会社を立派に見せたい」 という誘惑に駆られる瞬間があるかもしれません。 しかし、その一歩は会社を救うどころか、静かに内部から壊していきます。 最近報じられた大阪の高級鮮魚業者「海商」の問題や、過去の「堀正工業」「プロルート丸光」といった事例を見ると、企業経営には共通する危うさが見えてきます。 それは、 「不誠実は、最終的に企業から最も大切なものを奪う」 ということです。 不誠実は“最悪のコスト”を生む 粉飾決算や助成金の不正受給は、一時的には会社を延命させるように見えます。 しかし実際には、会社から最も大切な「現金」を奪っていきます。 例えば堀正工業では、銀行ごとに異なる決算書を使い分けていたとされますが、その結果、本来払う必要のない法人税まで支払っていました。 また、プロルート丸光でも、不正受給した助成金の返納に加え、粉飾決算が経営悪化に拍車を掛けました。 嘘を維持するためには、
不誠実な経営とは、会社を救う行為ではありません。 会社を静かに出血させ続ける“慢性疾患”なのです。 「見栄」が会社を壊す 破綻した企業に共通するのは、 「会社を大きく見せたい」 「優良企業と思われたい」 という過度な見栄です。 しかし、見栄は一度始まると止まりません。 小さな粉飾を隠すために、翌年はさらに大きな粉飾を重ねる。 気づいた時には、自力では戻れない規模まで膨れ上がっています。 経営者が守るべきなのは、自らの体裁ではなく、現場で働く従業員とその家族のはずです。 不誠実は組織の「鮮度」を奪う 海商が扱っていたのは高級鮮魚でした。 魚の鮮度には細心の注意を払っていても、経営の「数字」が濁れば、組織全体が腐敗します。 数字の不正は、単なる会計問題ではありません。 「数字は誤魔化してもいい」 という空気が広がると、
組織は、トップの倫理観に引っ張られるからです。 正直さこそが会社を守る ここで強調したいのは、 「赤字は悪ではない」 ということです。 商売をしていれば、一時的な落ち込みは避けられません。 しかし、経営者が正直であれば、再建の道は残されます。 事実を正直に開示し、誠実に再建へ向き合う企業には、
赤字は改善できます。 しかし、失った信用を取り戻すことは極めて困難です。 経営において最後にものを言うのは、結局「信用残高」です。 苦しい時に正直でいられる企業だけが、長期的には生き残っていきます。 まとめ 不正は、ある日突然起きるものではありません。 「少しぐらいなら」 「今期だけなら」 という小さな例外の積み重ねが、やがて会社全体を壊していきます。 だからこそ、内部統制とは会社を縛るための仕組みではありません。 会社を守るための仕組みなのです。 経営者が本当に守るべきものは、目先の数字や体裁ではなく、誠実な商売を通じて築き上げる「信用」と「未来」です。
0 コメント
信頼しているからこそ、任せきりにしない日本郵便の入札をめぐる不祥事は、
「大企業だから起きた問題」でも、 「特殊な事件」でもありません。 本質は、特定の担当者が重要な情報にアクセスでき、周囲のチェックが十分に働いていなかった点にあります。 つまり問題は、社員個人の資質だけではなく、一人で不正ができてしまう状態を放置していた組織の仕組みにあります。 これは中小企業にとっても、決して他人事ではありません。 性悪説は、社員を疑うことではない 多くの経営者は、 「うちは社員を信じている」 「疑うような仕組みは作りたくない」 と言います。 しかし、内部統制でいう性悪説とは、 「人は悪いことをする」と決めつけることではありません。
二重チェック、権限分散、承認記録。 これらは社員を疑うためではなく、社員が疑われないようにするための防具です。 「かわいさ余って憎さ百倍」になってからでは遅い 経営者が陥りやすいのは、 信頼している社員ほど、丸投げしてしまう という罠です。 「あの人なら大丈夫」 「長年やってくれているから任せている」 そうしてチェックが省略されます。 しかし、不正や重大なミスが発覚した瞬間、信頼は一気に反転します。 かわいさ余って憎さ百倍。 長年信頼してきた社員ほど、裏切られたと感じたときの怒りは大きくなります。 しかし本来、それは社員だけの問題ではありません。 一人に任せきりにした経営者の責任であり、組織の設計ミスでもあります。 きちんと仕組みを作っておかなければ、会社も社員も、あとで大きなしっぺ返しを受けることになります。 中小企業こそ「一人で完結」が危ない 中小企業では、次のようなことが珍しくありません。
しかし実際には、一人で完結できてしまう危険な状態です。 規模の問題ではありません。 仕組みの問題です。 完璧でなくても、サンプルチェックならできる もちろん、中小企業では人手に限りがあります。 大企業のように担当・承認・監査を完全に分けることは現実的ではありません。 それでも、次のような確認は可能です。
完璧な内部統制でなくても構いません。 大切なのは、「誰かが見る可能性がある」状態を作ることです。 何も見ないより、毎月数件でも見る。 それだけでも、不正やミスへの抑止力になります。 信頼しているからこそ、仕組みで守る 内部統制とは、社員を疑うための仕組みではありません。 社員を守り、会社を守り、経営者自身を守るための仕組みです。 信頼しているからこそ、任せきりにしない。 信頼を壊さないために、最低限の確認を仕組みにする。 それが、中小企業に必要な内部統制の第一歩です。 先週金曜日、東証グロース上場企業である株式会社はてなより、資金の不正流出に関する発表がありました。
翌営業日(4月27日)の株価はストップ安となり、市場からは厳しい評価が下されています。 この出来事を「上場企業の特殊な問題」として片付けてしまうのは簡単です。 しかし本質はむしろ逆で、中小企業にこそ起こり得る問題です。 本稿では、今回の事案を内部統制の観点から整理し、経営にどう活かすべきかを考えます。 1.何が起きたのか(公表事実の整理) 公表された内容から、主なポイントは以下の通りです。
ここで重要なのは、自社の内部チェックではなく、外部(銀行)からの指摘で発覚したという点です。 これは、少なくとも結果として 「内部のモニタリング機能が十分に機能していなかった可能性」 を示しています。 2.なぜストップ安まで売られたのか 今回の株価下落は、単なる損失額の問題ではありません。 投資家が見ているのは、次の3点です。
“会社として信用できるのか”が問われた結果と言えます。 3.想定される内部統制上の課題(一般論として) 個別の詳細は今後の調査を待つ必要がありますが、一般論として、不正送金が発生する典型パターンは共通しています。
中小企業では特に、この3つが同時に成立しやすい構造にあります。 4.中小企業が最低限やるべき3つの対策 大企業のような高度なシステムは不要です。 しかし、以下の“物理的な仕組み”は必須です。 ① 多段階承認の徹底 作成者と承認者を分離し、ネットバンキングの承認機能を必ず使う ② 決裁権限の明確化 「いくらまで誰が決裁するか」を金額基準で明文化する ③ ブラックボックス化を防ぐ“最低限の仕組み” 振込先登録と送金の担当者をそれぞれ別々にし、“ブラックボックス化”を防ぐ ポイントは、「人を信じない」のではなく、“人に依存しない仕組みを作る”ことです。 5.内部統制の本質は「優しさ」である 現場からはよく、こんな声が上がります。 「いちいち承認は面倒だ」 「信用していないのか」 しかし今回の本質はそこではありません。 問題は、 一人の判断ミスだけで、会社の資金が動いてしまう構造 にあります。 もし承認フローがあれば、 • 自分がミスしても止めてもらえる • 責任を一人で背負わなくて済む という状態になります。 内部統制とは、統制や監視のための仕組みではなく、 「一人のミスを組織で吸収するための安全装置」 です。 6.最後に:明日は自社で起きるかもしれない 今回の事案は、上場企業で起きました。 しかし、構造的には中小企業のほうがむしろリスクは高いと言えます。
「うちは大丈夫」ではなく「明日うちで起きる前提で考える」ことです。 内部統制はコストではありません。 会社を守るための、最も安価で確実な投資です。 |
RSSフィード