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先日、ある製造会社の工場を見学しました。
学びも多くありましたが、どうしても気になる点がありました。 それは「安全意識の低さ」と「非効率な作業環境」です。 一見すると別の問題ですが、実は深くつながっている――そんな気づきがありました。 危険と隣り合わせの職場 検品隣のスペースは梱包資材の置き場として利用されていました。 特に目立ったのは、パレットラック3段に積み上げられた段ボールのパレット。 また、瓶等の資材が本来の置き場ではない箇所に雑然と置かれており、そのため人が一人通れる程度の幅しか確保されていない箇所もありました。 メイン通路はある程度の幅が確保されているものの、フォークリフトが自由に旋回するには難しい広さでした。 段ボールはパレットラックの上に置かれていても、万一3段目から段ボールが落ちれば重大事故になりかねません。 「今まで事故がないから大丈夫」という発想は非常に危険です。 一度事故が起これば、労働基準監督署等の査察は勿論、事業停止につながる恐れもあります。 安全はプライスレス、最優先すべきものです。 非効率を生む2つの要因 現場を見て、非効率を招いている要因は大きく2つあると感じました。 ① 放置された設備 工場内には使われていない設備が2台も残されていました。 これらは、すでに外部委託や代替方法に切り替えているため不要でした。 撤去すればスペースが確保でき、そちらを活用することで作業効率は大きく改善するでしょう。 ② 製品ごとの専用梱包材 BtoCもありますが、この会社の事業の中心はBtoBでした。 それなのに製品ごとに専用の段ボールを用意していました。 汎用的な段ボールにラベルを貼る方法へ変えれば、段ボールの種類も減り、管理や保管もずっと楽になります。 まとめ:安全と効率は表裏一体 少し視点を変えるだけで、改善の余地はすぐに見つかります。 安全をおろそかにすれば、効率も落ちる。 逆に、安全を重視すれば効率や生産性の向上にもつながります。 「事故がないから大丈夫」という思い込みを捨て、小さな改善を積み重ねること。 それが現場を守り、企業の力を高める一番の近道だと感じました。
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―リタイヤして語る棚卸の価値―
「最後の砦」を担った日々 社会人になって以来、私は長年にわたり、毎期の「実地棚卸」という定例イベントに関わってきました。 会社の資産を守る経理にとって、これは避けて通れない――いわば「最後の番人」としての役割です。 今年、会社員生活を終え、もうあの倉庫の冷たい空気に触れることはありません。 当日自然と身が引き締まった、あの独特の緊張感も今では懐かしい思い出です。 太陽の当たらない倉庫や工場の現場はとにかく寒く、早朝からの作業も多いため、正直「好きではない」仕事でした。 しかし、あの地道で面倒な作業こそが、会社の状態を「肌で感じる」貴重な機会だったと、愛着をもって思い出しています。 「余力がない」では済まされない ― 実地棚卸の3つの役割 中小企業の経営者の中には、 「うちにはそんな余力はない」 とおっしゃる方もいるかもしれません。 しかし、実地棚卸は単なる在庫確認ではなく、経営の健全性を支える「内部統制」の要です。 ここでは、実地棚卸が果たす3つの重要な役割を整理します。 ① 適正な利益の計算 売上原価は「期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高」で計算されます。 棚卸残高を正確に確定しないと、利益も経営判断も誤ってしまいます。 現物を確認してこそ、数字の裏にある「本当の経営実態」を把握できます。 ② 不正の発見・予防 帳簿上の在庫と現物を照合することで、横領・盗難・改ざんなどの不正を発見できます。 また、定期的な棚卸を実施することで「不正をやりにくくする環境」を整えることにもつながります。 棚卸は、企業にとって最大の抑止力でもあるのです。 ③ 在庫の品質・状態の確認 棚卸の現場では、不良品や破損品といった物理的劣化品、 あるいは陳腐化した在庫(経済的劣化)などを見つけることができます。 こうした気づきは、在庫管理や仕入の見直しにつながります。 面倒を「改善」のチャンスに変える 棚卸が「面倒」と感じる理由の中には、改善のヒントが隠れています。 面倒な理由 改善の方向性 点数が多くて数えるのが大変 ⇒ 適正在庫の見直し 種類が多くて整理しにくい ⇒ 共通化・集約化の検討 在庫が分散していて数えにくい ⇒ 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の実践 こうした小さな改善が、作業効率の向上やコスト削減に直結します。 「面倒な作業だからこそ、価値がある」――実地棚卸にはそんな側面があります。 経営者へのメッセージ 長年、棚卸の現場に携わった者として申し上げたいのは、 「余力がない」と片づけてしまうのは、あまりにも惜しいということです。 実地棚卸は、自社の状態を肌で感じられる唯一の機会です。 数字だけでは見えない「現場の真実」を知るために、 ぜひ一度、真剣に取り組んでみてください。 かつて私の職場には、ドイツ人の社長がいました。彼のマネジメント能力については、贔屓目に見て「中」といったところで、彼の発言に「No」と反論せざるを得ないことも少なからずありました。
とはいえ、彼には誰もが認めざるを得ない、際立った才能が一つありました。 それは、「安全衛生」に対する卓越した視点です。 彼の工場安全査察に同伴する時間は、私にとって非常に有意義で、多くの学びがありました。 工場内の安全に関する彼の意見は的確で、誰も反論できない説得力がありました。 彼の送別会が本社と工場でそれぞれ開催された際、私が本社での送辞で彼の安全衛生に関する着眼点の素晴らしさに触れたのですが、驚くべきことに、工場での送別会の送辞の内容もほぼ同じだったと聞きました。 このことは、彼の安全衛生に対する視点がいかに抜きん出ていたかを雄弁に物語っていると思います。 なぜ彼はそこまで安全衛生に関して優れた視点を持っていたのでしょうか? 私は、彼が「慣れ」や「しきたり」といったものに囚われず、常にフラットな視点で物事を見ていたからだと考えています。 「なぜ、この手順なのか?」「なぜ、このやり方が続いているのか?」と問いかけ、自身の持つ知識や知見と照らし合わせ、矛盾する点があれば徹底的に追求していたのでしょう。 私たちも日々の業務において、ついつい「慣れているから」「これまでこうしてきたから」という理由で物事を深く考えずに進めてしまうことがあります。 しかし、彼の姿勢から学ぶべきは、そうした「慣れ」や「しきたり」を排除し、「なぜ」という問いを常に持ち続けることの重要性です。 特に安全に関わる場面では、「なぜ?」と問い続ける姿勢こそが、事故を未然に防ぎ、安全な職場環境を築くうえで不可欠なのだと、改めて実感しました。 私も彼の安全に対する姿勢を見習い、常に本質を追求する視点で仕事に取り組んでいきたいと思います。 |
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