原価計算の重要性
1962年当時の大蔵省(現在の財務省)が定めた「原価計算基準」では、原価計算を次のように定義しています。 「製造活動を財務会計から受け取ったデータを、給付(製品やサービス)と結びつけて一定の計算を行い、貨幣価値で表す技術である。」 30年ほど前、私が製錬会社の会計部にいた頃のこと。ある飲み会で先輩から「原価計算とは何か?」と聞かれ、答えに詰まっていると、その先輩はひとこと、「原単位だよ」とおっしゃいました。 「なるほど、上手いこと言うな」と感心し、以来この言葉を大切にしています。 原価計算基準では、原価計算は次の3つの段階で成り立っています。
この過程を通して「何にどれだけコストをかけたか」がわかります。 先輩の言葉は、このプロセスの中でも「1個あたりの材料や時間(=原単位)」をしっかりつかむことの重要性を説いたのだと、今でも思います。 経営者こそ、原単位を意識すべき 原単位とは、製品1個あたりに必要な原材料の量や製造時間等のことです。これを把握すれば、数字に基づく判断ができるようになります。 例えば「今月の原材料費は高い」と感じても、それが生産増や製品構成に由来するものなのか、歩留まりが悪化したものか、理由が違えば対処も異なります。 また、1個あたりの作業時間が多すぎるなら改善の余地が生まれます。 つまり、原単位の把握は「勘と経験」から「数字と根拠」による経営への一歩なのです。 数字が価格交渉を強くする 先日、経済産業省関東経済産業局の講演を拝聴する機会を得ました。 昨年の調査によると、原料価格やユーティリティ価格等の上昇分を、全てを販売価格に転嫁できた企業は凡そ2割5分、一方まったく転嫁できなかった企業も約2割ありました。全体での転嫁率は約45%とのことです。 興味深いことは、転嫁に成功した理由の中で最も多かったのが、「原価を示して交渉した」こと(約45%)ということでした。 これは、すべての数値を開示することは不可能でしょうが、「説得力のある根拠」を持って価格交渉することがお取引先の理解や納得につながるという証です。 そのためには、やはり日頃から自社の原価、特に原単位をしっかり把握しておくことが欠かせません。 原価計算の基本は身近なところで学べる 国が全国都道府県に設置している「よろず支援拠点」では、原価計算の基礎や計算方法を学ぶことができます。 会計の専門家でなくても、ポイントを押さえれば誰でも身に付きます。 勿論、私にご相談頂いても結構です。お待ちしております。 Contact 中小企業経営者の皆さまには、数字の裏づけを持った経営判断、取引先との交渉、そして利益改善のためにも、ぜひ「原単位」の考え方を取り入れていただきたいと思います。
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