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中小企業診断士として思うこと

中小企業を狙うボイスフィッシング - 経営者が今すぐ見直すべき内部統制とは

10/3/2026

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 「銀行からの電話だと思ったら詐欺だった」

そんな事件が、今や企業でも起きています。
近年増えているのが、電話や音声を使って企業をだます 「ボイスフィッシング」 です。
AIによる音声合成技術の発達により、社長や取引先の声を模倣することさえ可能になり、詐欺の手口は急速に高度化しています。
しかし、この問題は単なるITセキュリティの話ではありません。
多くの場合、被害の背景には 業務ルールや内部統制の弱点 が存在しています。
今回は実際の事例を踏まえながら、中小企業が取るべき実践的な対策を整理してみたいと思います。

ボイスフィッシングとは
ボイスフィッシングとは、電話などの音声を利用し、銀行や取引先などの関係者を装って情報や資金をだまし取る詐欺手法です。
従来のフィッシング詐欺はメールや偽サイトが中心でしたが、最近は 電話による心理的誘導 を組み合わせた手口が増えています。
声は相手を信用させやすく、企業の業務連絡とも親和性が高いため、企業が狙われやすいのが特徴です。

実際に起きた企業被害

①山形鉄道の偽電話詐欺
山形鉄道では、銀行を装った自動音声の電話をきっかけに、偽の銀行員がネットバンキングの更新を案内しました。
その後、誘導された偽サイトにログイン情報を入力した結果、約1億円が送金される被害が発生しています。
銀行からの連絡という日常的な業務を装った点が、この詐欺の巧妙さと言えるでしょう。

②AIによる「社長の声」の偽装
さらに海外では、AIでCEOの声を再現し送金を指示する詐欺も発生しています。
日本の大手メーカーでも同様の未遂事件が報告されています。
電話を受けた幹部が違和感に気づいたことで、被害は未然に防がれました。
この事例は、「声だけでは本人確認ができない時代」に入りつつあることを示しています。

診断士の視点で見る問題の本質

ボイスフィッシングはサイバー犯罪ですが、経営の視点で見ると本質は 内部統制の弱点 にあります。
特に次の3つが重要です。

①送金プロセスの統制不足
1人の判断で送金できる仕組みは、詐欺に対して非常に脆弱です。

②確認ルールの曖昧さ
電話での指示をそのまま受け入れてしまう業務慣行は危険です。

③心理的安全性の不足
「確認したら怒られる」という組織では、違和感を共有できません。

つまり、この問題は
ITの問題というより、組織マネジメントの問題でもあるのです。

中小企業が取るべき対策

⒈ 送金の内部統制を整備する
まず重要なのは送金プロセスの見直しです。
例えば次のようなルールです。
・送金は複数人承認
・高額送金は別経路で確認
・担当者任せにしない
いわゆる ダブルチェック体制 を作ることが基本です。

⒉ 「電話だけで決めない」ルール
詐欺の多くは、電話で緊急性を演出して判断を急がせます。
そのため
・電話だけで送金判断をしない
・既存の連絡先に折り返し確認する
・普段と違う連絡手段には警戒する
といった 業務ルールの明確化 が有効です。

⒊違和感を共有できる組織
実際に詐欺を防いだケースでは、
担当者の「何かおかしい」という直感が決め手でした。
そのためには
・怪しいと感じたら報告する
・確認行動を評価する
・早期相談を促す
といった心理的安全性のある組織文化が不可欠です。

まとめ

ボイスフィッシングは、今後さらに巧妙化していくでしょう。
しかし多くの被害は、内部統制の隙を突かれて発生しています。

重要なのは
「人を疑うこと」ではなく
「仕組みでミスを防ぐこと」です。

送金ルールや確認プロセスを整備することは、サイバー対策であると同時に 企業ガバナンスの強化にもつながります。
この機会に、自社の業務ルールを一度見直してみてはいかがでしょうか。

  出典:「山形鉄道」1億円の被害 ボイスフィッシング詐欺の被害として山形県内最大規模か2025年3月12日
URL:https://news.ntv.co.jp/n/ybc/category/society/yb54c87f03cb214fae8f85d11063b1a686
  出典:「AI悪用か、社長の偽音声で指示 部下に電話、不正送金命じる」2025年3月19日
URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/5348195015828b041fc662eb9b450e8256a88f9d 


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482億円が窃取されたDMM Bitcoin事件から学ぶ!- ソーシャルエンジニアリングの巧妙な手口と今日からできる対策

3/3/2026

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ソーシャルエンジニアリングとは 

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は聞いたことがあるけれど、ソーシャルエンジニアリングは聞いたことがない、という方も多いのではないでしょうか。

ソーシャルエンジニアリングは、人の心の隙や油断を狙ったサイバー攻撃です。
高度な技術を要する攻撃とは異なり、人の心理を巧妙に突くため、防ぐのが非常に難しいのが特徴です。
そのため、従業員のセキュリティ意識向上など、組織的な対策が不可欠になります。

ソーシャルエンジニアリングの種類には、関係者へのなりすまし、フィッシング、のぞき見などがありますが、最近ではSNSを利用した手口も報告されています。

狙われたDMM Bitcoin 

2024年12月に警察庁が発表したDMM Bitcoinからの約482億円相当の暗号資産窃取事件は、北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループ「TraderTraitor」(トレイダートレイター)によるものと特定されました。
「これだけだと、ソーシャルエンジニアリングと関係ないのでは?」と思われるかもしれませんが、その手口はまさにソーシャルエンジニアリングそのものでした。

https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/koho/caution/caution20241224.html

攻撃者は、ビジネスSNSであるLinkedInを使い、DMM Bitcoinが利用する企業向け暗号資産ウォレットソフトウェア会社Gincoの従業員に接触しました。
Gincoのウォレット管理システムへのアクセス権を持つ従業員に対し、GitHub上に保管された「採用前試験」を装った悪意あるPythonスクリプトのURLを送付。
従業員がこのPythonコードを自身のGitHubページにコピーして実行してしまったことで、情報が侵害されました。

これは、被害者の「より良いキャリアを築きたい」「自分のスキルを評価されたい」といったポジティブな感情や、プロフェッショナルとしての義務感といった人間の心理的な隙を巧みに悪用する、ソーシャルエンジニアリングの典型的なパターンでした。

街中でも起こり得るソーシャルエンジニアリング 

ソーシャルエンジニアリングは、このように手の込んだものだけではありません。
先に記載したとおり、「のぞき見」もその一つです。

最近では、モバイルPCやスマートフォンの性能向上やSNSの浸透に伴い、電車やバス内でのビジネス上のやり取りが散見されます。
空いている空間で周囲を気にしながら作業しているのであればまだしも、満員電車やバス内で、周囲への注意を払わずスマートフォンに向かい黙々とタイピングに勤しんでいる姿は、残念ながらよく見かけます。
日本人は「性善説」で物事を捉えがちですが、万が一、悪意のある人間がタイプされた内容を盗み見し、悪用したらどうなるでしょうか?
単に接待の予定についてのやり取りであれば問題ないかもしれませんが、価格や取扱量といった営業情報が含まれている場合は、会社に大きな損害を与えかねません。

継続的なソーシャルエンジニアリング対策教育 

「ソーシャルエンジニアリング対策教育」というと大変そうに感じるかもしれませんが、実際はそうではありません。

経営者、そして従業員の皆様が、一人ひとりのセキュリティ意識を向上させることが重要です。
身近なところでは、以下の点に注意しましょう。
  • 重要情報を取り扱う際は周囲を確認する 
  • 離席時は、パソコンなどのロックを徹底する 
  • 応接室や会議室などに重要情報を放置しない 

また、身に覚えがない、あるいは疑わしいと思ったメールは、すぐに開封せず、必ず発信者に電話で確認をするなどの作業が必要です。
さらに、セキュリティソフトを常に最新の状態にしておくことで、誤ってマルウェアに感染するなどのリスクを減らすことができます。

折角大事に築き上げた会社を、たった一つの間違いで壊してしまう、
ソーシャルエンジニアリングは、そんな恐ろしい可能性を秘めています。
皆様の会社や大切な従業員を守るためにも、ぜひご一考いただければと存じます。
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「取適法」ができても、会社を守ってくれない

18/2/2026

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――2026年改正が本当に突きつけた“経営者の実力差”

2026年1月、「下請法」は取適法(中小受託取引適正化法)へと改正されました。
ニュースや解説では「中小企業が守られる」「価格転嫁が進む」といった前向きな言葉が並びます。
しかし、ここで一つ、経営者として冷静に考える必要があります。
法律が変わったからといって、経営が自動的に楽になるわけではありません。
むしろ今回の改正は、経営者の実力差をはっきりと可視化する法律だと言えます。
________________________________________
1.取適法改正の本質は「交渉の土俵整備」

今回の改正の最大のポイントは、
「協議に応じない一方的な代金決定」が明確に禁止されたことです。
つまり国は、
 • 価格交渉を申し出る権利
 • 交渉の場に着く権利
を中小企業に与えました。
しかし、ここで重要なのは――
国は“価格を決めてはくれない”という点です。

交渉の中身、すなわち
 • いくら上げるのか
 • なぜその金額なのか
は、すべて経営者の責任です。
________________________________________
2.「値上げしてください」だけでは守られない

取適法では、発注側が合理的理由なく協議を拒否することは違法になりました。
しかし裏を返せば、
合理的な説明がない交渉は、協議したとは認められない
ということでもあります。
たとえば、
 • 「原材料が上がったので上げてください」
 • 「人件費が厳しいんです」
このレベルの主張だけでは、発注側が「根拠が示されていない」と判断すれば、違法とは言えないケースも十分にあり得ます。
法律は“説明できる企業”しか守らない。
これが、今回の改正の厳しい現実です。
________________________________________
3.問われるのは「コストを語れる経営者」かどうか

では、どんな経営者が交渉できるのでしょうか。
答えはシンプルです。
自社のコスト構造を、自分の言葉で説明できる経営者です。
具体的には、
 • 原材料費・労務費・エネルギー費は、それぞれ原価の何%か
 • そのうち、今回どの費目が、どれだけ上昇したのか
 • 価格を何%上げないと、利益がどうなるのか

これを数字で説明できるかどうか。
これができない限り、取適法という“武器”を持っていても、実戦では使えません。
________________________________________
4.法律は「丸腰の経営」を助けてはくれない

公正取引委員会は、価格交渉を支援するために交渉用フォーマット(労務費転嫁に関する様式)を公開しています。
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/romuhitenka.html
これは非常に有効なツールですが、中身を埋められるかどうかは、経営者次第です。
 
 • コストの内訳が分からない
 • 原価計算が曖昧
 • 勘と経験で価格を決めている

こうした状態では、フォーマットは空欄だらけになります。
法律は、「考えていない経営」や「把握していない経営」を補ってはくれません。
________________________________________
5.取適法は“経営力を鍛える法律”である

今回の改正を前向きに捉えるなら、取適法は「中小企業を守る法律」であると同時に、経営者に“数字と向き合え”と迫る法律だと言えます。
 • どんぶり勘定のままでは交渉できない
 • コストを把握している会社ほど、堂々と話せる
 • 結果として、取引関係も長続きする
これは経営の王道そのものです。
________________________________________
結び:法律より先に、経営を整える

取適法は、経営者にとって追い風です。
しかし、その風を帆に受けて進めるかどうかは、船(=経営)が整っているかにかかっています。
まずやるべきことは一つ。
自社のコストを、説明できる形にすること。
それができて初めて、法律は「味方」になります。
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    執筆者

    imwz経営サポート代表
    伊藤安彦
    不定期ですが、頑張ってアップします。
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