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かつて“マニアックな愛好家”扱いされていた鉄道ファン(鉄オタ)は、今や鉄道会社にとって「高収益をもたらす“最強の上顧客”」となりました。
この変化の裏にある「ファンを味方につける」戦略は、経営資源が限られた中小企業こそ学ぶべき逆転の発想です。 1. ターゲットの再定義:「単なる一般乗客」から「最強のファン」へ 鉄道会社は、価格に敏感な一般客ではなく、熱狂ファンに焦点を切り替えました。 • 一般客: 価格に敏感(安価な移動手段を求める)。 • 熱狂ファン: 価格に鈍感(熱意のあるものには高額を支払う)。 希少性や体験価値に喜んでお金を払い、高利益率の特別収入と強い口コミによる宣伝効果をもたらします。 2. 提供価値の転換:「モノ」ではなく「物語と体験」を売る 売るものを「列車」から「物語」と「体験」へと転換しました。 • 廃止予定の車両・路線を「負債」ではなく「最後の勇姿」や「歴史のレガシー」として商品化。 • 車両基地など普段立ち入れない場所を「非日常の冒険体験」として開放。 【中小企業への教訓】 あなたの会社の「古くて当たり前」のものが、誰かにとっては「特別な歴史」や「限定体験」に化けるかもしれません。 3. ニッチ戦略を成功させる3つの鉄則 鉄則①:まずは“コアなファン”を見つける すべての人ではなく、「異常なほどの愛を持つ人」に注目しましょう。彼らは... • 最強のテスター:マニアックな意見で製品の質を極限まで高めます。 • 最強の広報マン:熱量ある口コミが、広告費ゼロで一般層を惹きつけます。 鉄則②:“余っているもの”こそが宝の山 お金をかけず、今ある資源の価値を再定義します。 既存資産 鉄道会社の例 中小企業への転換例 使わないモノ 廃止予定の車両 旧型機材の部品、試作品 見せない場所 車両基地の裏側 工場内部の製作工程、デザイナーのラフスケッチ 終わるノウハウ 引退が近いベテランの技術 熟練工の限定ワークショップ、秘伝レシピの公開 鉄則③:「特別な理由」で単価を上げる ファンは高額でも「特別な理由」があれば購買します。 • 例:「限定50個、社長が一つ一つ手作業で磨き上げた逸品」 • 例:「創業者の思いを聞きながら商品を作る体験ツアー」 熱狂する少数に刺さる商品こそが、持続的な利益を生むのです。 結び 中小企業は資金力では大企業に勝てませんが、「想い・物語・限定性」を武器に、熱烈に応援してくれる少数を大切にすれば生き残れます。
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―リタイヤして語る棚卸の価値―
「最後の砦」を担った日々 社会人になって以来、私は長年にわたり、毎期の「実地棚卸」という定例イベントに関わってきました。 会社の資産を守る経理にとって、これは避けて通れない――いわば「最後の番人」としての役割です。 今年、会社員生活を終え、もうあの倉庫の冷たい空気に触れることはありません。 当日自然と身が引き締まった、あの独特の緊張感も今では懐かしい思い出です。 太陽の当たらない倉庫や工場の現場はとにかく寒く、早朝からの作業も多いため、正直「好きではない」仕事でした。 しかし、あの地道で面倒な作業こそが、会社の状態を「肌で感じる」貴重な機会だったと、愛着をもって思い出しています。 「余力がない」では済まされない ― 実地棚卸の3つの役割 中小企業の経営者の中には、 「うちにはそんな余力はない」 とおっしゃる方もいるかもしれません。 しかし、実地棚卸は単なる在庫確認ではなく、経営の健全性を支える「内部統制」の要です。 ここでは、実地棚卸が果たす3つの重要な役割を整理します。 ① 適正な利益の計算 売上原価は「期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高」で計算されます。 棚卸残高を正確に確定しないと、利益も経営判断も誤ってしまいます。 現物を確認してこそ、数字の裏にある「本当の経営実態」を把握できます。 ② 不正の発見・予防 帳簿上の在庫と現物を照合することで、横領・盗難・改ざんなどの不正を発見できます。 また、定期的な棚卸を実施することで「不正をやりにくくする環境」を整えることにもつながります。 棚卸は、企業にとって最大の抑止力でもあるのです。 ③ 在庫の品質・状態の確認 棚卸の現場では、不良品や破損品といった物理的劣化品、 あるいは陳腐化した在庫(経済的劣化)などを見つけることができます。 こうした気づきは、在庫管理や仕入の見直しにつながります。 面倒を「改善」のチャンスに変える 棚卸が「面倒」と感じる理由の中には、改善のヒントが隠れています。 面倒な理由 改善の方向性 点数が多くて数えるのが大変 ⇒ 適正在庫の見直し 種類が多くて整理しにくい ⇒ 共通化・集約化の検討 在庫が分散していて数えにくい ⇒ 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の実践 こうした小さな改善が、作業効率の向上やコスト削減に直結します。 「面倒な作業だからこそ、価値がある」――実地棚卸にはそんな側面があります。 経営者へのメッセージ 長年、棚卸の現場に携わった者として申し上げたいのは、 「余力がない」と片づけてしまうのは、あまりにも惜しいということです。 実地棚卸は、自社の状態を肌で感じられる唯一の機会です。 数字だけでは見えない「現場の真実」を知るために、 ぜひ一度、真剣に取り組んでみてください。 1. 転機と再会
今年の3月末で会社員生活を終え、4月に最初の転職先のCEOにご挨拶に伺いました。 かつての上司で、当時はインテリア事業を担当されていた方です。 その会社は「建材」と「インテリア」の二本柱。 建材事業は安定していましたが、インテリア事業は利益率が低く、苦戦していました。 製品は高い機能性を持ちながらも、設計事務所や代理店経由でしか伝わらず、一般消費者にはほとんど知られていなかったのです。 ところが今回、CEOの口から出たのは「インテリア事業が見違えるほど改善された」という言葉。 その背景には、“製品の価値の伝え方”を根本から変えた経営改革がありました。 2. 「売り方」ではなく「伝え方」を変える CEOが着手したのは、3つの変革です。 ① 一般消費者への直接アプローチ 雑誌広告でBtoCの認知を拡大し、潜在顧客に直接リーチ。 これにより「知る人ぞ知る」存在から「憧れのブランド」へと位置づけが変わりました。 ② 代理店を“ギャラリー化” 一部の代理店を体験型のギャラリーに転換。 誰が説明しても同じブランド体験を提供できるようにし、営業力のバラつきを解消しました。 ③ 自社ショールームの“予約制”導入 ゆったりと時間を取り、専門的な説明や提案を行うスタイルに。 「丁寧な接客」と「特別感」を演出し、製品価値への納得感を高めました。 3. 製品が「体験」に変わった瞬間 こうした取り組みの結果、製品は単なる「高級インテリア」ではなく、 「暮らしの質を高めるインテリア体験」として再定義されました。 価格競争から抜け出し、顧客は“体験への共感”で購入を決めるようになったのです。 まさに「良い製品を売る会社」から「価値を体験として届ける会社」への進化でした。 4. 中小企業にもできる3つの工夫 この話は大企業だけのものではありません。 中小企業でも「価値の伝え方」を工夫するだけで、製品の魅力は何倍にもなります。 ①誰に届いているかを見直す 最終顧客まで自社の強みが伝わっているか確認しましょう。 ② “体験”の場をつくる 展示会・試用・オンライン相談など、実際に体感できる仕掛けを。 ③ 限定性や予約制で特別感を出す 「選ばれた顧客に向けた提案」が、ブランドの格を上げます。 5. まとめ:今日からできる一歩 製品の良さは、伝え方しだいで価値が何倍にも変わります。 機能を語るだけでなく、「体験」として伝える工夫が、次の成長を生む鍵です。 もし「製品には自信があるのに売れない」と感じているなら、 今こそ「価値の伝え方」を見直すタイミングです。 ターゲットを明確にし、伝え方を再設計するだけで、売上の質も顧客との関係性も変わります。 今日からできる“小さな一歩”を、ぜひ始めてみてください。 |
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